大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

静岡地方裁判所 昭和50年(ワ)403号 判決

原告 富士ブロイラー株式会社

被告 国

代理人 熊谷岩人 小坂文弘 寺田郁夫 ほか四名

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は原告に対し金六二六五万三四〇〇円及び内金五五〇五万三四〇〇円に対する昭和五〇年七月一一日から支払ずみまで年五分の割合による金員を支払え。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

3  仮執行宣言。

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告の請求を棄却する。

2  訴訟費用は原告の負担とする。

3  担保を条件とする仮執行免脱宣言。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  事故の発生

(一) 原告は、鶏肉製造、販売等を業とするものであるが、昭和五〇年五月、静岡県富士宮市北山所在の富士宮工場内に分離前相被告富士汽罐工業株式会社(以下「富士汽罐」という。)の製造にかかるへい獣処理用攪拌乾燥機(以下「本件乾燥機」という。)を設置し、ブロイラーの食肉加工に伴い発生する残滓を高圧分解し配合飼料の原料を製造する化成工場を新設し、運転を開始した。

(二) 同年七月一一日午前九時二四分ころ、運転中の本件乾燥機の原料投入口鉄蓋支持部分のボルトが切断して右鉄蓋が吹き飛び、本件乾燥機内で蒸煮中の鶏の不可食物等が化成工場の屋根を突き破つて飛散し約三〇〇メートルの範囲内の付近の住宅や畑等に降りそそいだ(以下「本件事故」という。)。

(三) 本件事故により大きな衝撃を受けた地域住民は、同日富士宮工場全体の全面的な無期限操業停止要求を決議し、翌一二日原告にその旨申し入れ、交渉の結果、原告は化成工場の無期限操業停止を約束させられた。以後同工場の操業は地域住民の許諾が得られないため事実上不可能となり、結局同工場は廃業を余儀なくされた。

また本件事故により付近の畑の農作物等に被害が生じ、原告においてその損害を補償した。

2  事故の原因

(一) 本件乾燥機は最高使用圧力一平方センチメートルあたり七キログラムを前提に、これ以上の圧力に耐え得るように設計されていた。

(二) ところが現実に製作された本件乾燥機は、原料投入口部分が、次の点において設計に従つていなかつた。

(1) 右投入口鉄蓋を支えるアーム部分を支持軸に固定する一本のボルト(別紙図面記載イ)が、設計上長さは四五ミリメートル、材質は日本工業規格G三一〇二・S三五Cの鋼材とされていたのに、本件乾燥機においては長さが三五ミリメートルと短く、材質も右より弱い同規格G三一〇一・SS四一の鋼材を使用したものになつている。

(2) 前記支持軸を本体の支持軸取り付け台(別紙図面記載ハ)に固定する四本のボルト(別紙図面記載ロ)が、設計上前記S三五Cの材質を使用したものとされているのに、本件乾燥機においては右より弱い前記SS四一の材質を使用したものになつている。

(3) 前記支持軸取り付け台の鋼板が、設計上厚さ二二ミリメートルとされていたのに、本件乾燥機においては厚さ二七ミリメートルになつている。

(三) 以上のとおり本件乾燥機の鉄蓋部分は、設計に比べて、前記(1)のボルトにおいて締めつけ部分が短いうえに材質が弱く、同(2)のボルトにおいても同(3)の事情からナツトで締めつける部分が短くなり、材質も弱かつたことから設計どおりの強度を有さず、そのため本件乾燥機内の圧力が許容限度内の一平方センチメートルあたり六・四キログラムであつたにもかかわらず、右各ボルトがこれに耐えられず切断しあるいはねじ山が欠け、本件事故に至つたものである。

3  被告の責任

(一) 本件乾燥機は労働安全衛生法関係法令上の第一種圧力容器に該当し、同法令上、静岡労働基準局長は製造許可及び構造検査を、富士労働基準監督署長は落成検査を各実施し、その安全性について審査する権限を有していた。本件乾燥機は昭和五〇年四月一日右構造検査を受けてこれに合格し(ただし同検査の対象となるのは缶体部分のみである。)、同月二一日構造検査済証の交付を受け、同年五月二一日落成検査を受けてこれに合格し、そのころ第一種圧力容器検査証の交付を受けていた。

(二) 製造許可上の過失

静岡労働基準局長は富士汽罐が本件乾燥機を製造するについて製造許可手続を行なわなかつた。

右不作為はボイラー及び圧力容器安全規則(以下「規則」という。)四九条に違反する。

(三) 構造検査上の過失

(1) 静岡労働基準局長は、富士汽罐から本件乾燥機缶体部分の構造検査の申請を受けた時点においては本件事故において破損した原料投入口部分(別紙図面記載の鉄蓋つきの円筒形の部分)がまだ取り付けられておらず、同申請書添付の構造図にも同部分の記載がなかつたことから、同部分の取り付けられていない本件乾燥機缶体部分について構造検査を行ない、合格の判定をして富士汽罐に対し検査済証を交付した。

しかし、同申請書添付の強度計算書には原料投入口部分の記載があり、同計算書は申請書及び同添付書類の内容を補充するものであるから、構造検査の対象となるべき圧力容器は同計算書の記載内容を考慮して、同部分を取り付けた本件乾燥機缶体部分と判断されるべきであつた。

よつて静岡労働基準局長が構造検査の際右部分について検査を行なわなかつたことは規則五一条に違反する。

(2) 構造検査申請書及び同添付書類中強度計算書以外のものには、本件乾燥機缶体部分の仕込口(原料投入口部分を接続すべき部分)にいかなる蓋を装着するかについて明確な記載がなかつた。

したがつて、強度計算書が前記のような意味を持たないとするならば、本件乾燥機缶体部分の重要な一部分である右蓋について構造検査の申請が欠落していたことになるから、静岡労働基準局長は構造検査の申請を不適法なものとして却下すべきであり、それにもかかわらずなされた前記構造検査及び同検査済証の交付は前記規則に違反する。

(3) また、静岡労働基準局長は原料投入口部分については構造検査を行なわなかつたにもかかわらず、検査済証を交付するに際し同部分についても構造検査に合格したかのごとく、同部分についての記載のある強度計算書にまで検査済の割印を押捺した。右は前記規則に違反する。

(四) 落成検査上の過失

落成検査申請時には既に本件乾燥機に原料投入口部分が取り付けてあつた。

しかるに富士労働基準監督署長は、落成検査は構造検査合格後でなければ行なうことができないのに、構造検査を受けていない右部分が同検査に合格済の鋼製平板に代わつて取り付けられているのを看過して本件乾燥機の落成検査を行ない、合格と判定し、検査証を交付した。

右は規則五九条二項に違反する。

(五) 以上の各過失のため前記瑕疵のある本件乾燥機が運転されることになり本件事故の発生に至つたものである。

よつて被告は本件事故による原告の損害について国家賠償法一条一項に基づく賠償責任を負う。

4  損害

本件事故のために原告は以下の損害を受けた。

(一) 化成工場設備関係 金四〇五九万八八〇〇円

(1) 本件事故により原告は前記のとおり化成工場の廃業を余儀なくされた。同工場の諸設備に要した費用は金七九八四万円である。

(2) そのうち同工場廃業後も利用可能な設備に関する費用は次のとおりである。

付帯設備   金一〇四〇万円

付帯工事   金一一〇万円

建屋工事   金九〇〇万円

給水工事   金三八万七二〇〇円

原料輸送設備 金一〇〇万円

据付工事   金一万三〇〇〇円

雑費     金九万一〇〇〇円

以上合計   金二一九九万一二〇〇円

(3) 同工場の設備のうち本件乾燥機及びこれと同型の機械一台並びにこれらの付属設備については修理、運搬等に金七七五万円の経費をかけ、金二五〇〇万円で売却し差し引き金一七二五万円を得ることができる。

(4) 以上によれば化成工場の廃業による同工場の設備関係の損害額は右(1)の金額から(2)、(3)の金額を控除した金四〇五九万八八〇〇円となる。

(二) 事故発生時諸経費 金二二万五〇〇〇円

(三) 農作物損害補償費 金一五七万九六〇〇円

(四) 営業損害     金三六四五万円

本件事故以後化成工場の操業が不可能になつたことにより営業利益をあげられなかつたのでそのうち五年分を損害として請求する。

右工場の操業による収益は一か月金六〇万七五〇〇円とすべきであり、したがつて右損害額は金三六四五万円となる。

(五) 弁護士費用    金七八〇万円

原告は本件訴訟の追行を原告訴訟代理人らに委任し、日本弁護士連合会報酬規定に基き報酬として金七八〇万円を支払うことを約した。

(六) 損害の填補

原告は富士汽罐との和解により同会社から本件損害の填補として金二四〇〇万円の支払いを受けることになつたので同金額を本件損害額から控除する。

5  よつて原告は被告に対し不法行為に基く損害賠償請求として金六二六五万三四〇〇円及び内金五五〇五万三四〇〇円に対する不法行為による損害発生時である昭和五〇年七月一一日から支払ずみまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  請求原因に対する認否及び反論

1(一)  請求原因1(一)の事実のうち原告の営業目的及び原告が富士宮工場内に新設した化成工場に本件乾燥機を設置していたことは認めるが、その余は知らない。

(二)  同1(二)の事実のうち七月一一日本件乾燥機の鉄蓋が吹き飛ぶ事故の発生したことは認めるが、その余は知らない。

(三)  同1(三)の事実のうち化成工場を廃業したことは認めるが廃業を余儀なくされたことは否認する。その余は、知らない。

2(一)  同2(一)の事実のうち本件乾燥機が七キログラム以上の圧力に耐え得るように設計されていたことは否認し、その余は知らない。

(二)  同2(三)の事実は知らない。

3(一)  同3(一)の事実は認める。

(二)  同3(二)前段の事実は認め、その余は否認する。

既に製造許可を受けている第一種圧力容器と同型式のものを製造するについては、製造及び検査に関する設備その他の製造条件が許可時に比して低下していない限り改めて製造許可を受ける必要はない。

富士汽罐は昭和三八年二月二〇日ジヤケツト付第一種圧力容器についてボイラ及び圧力容器安全規則(昭和三四年二月二四日労働省令第三号)三九条に基く製造認可を受けており(同認可は労働安全衛生法附則三条により同法三七条に基く右製造許可とみなされる。)、本件乾燥機もジヤケツト付第一種圧力容器であるから、これを製造するについては改めて製造許可手続を行なう必要はなかつた。

(三)(1)  同3(三)(1)前段の事実は認める。同中段の事実のうち、申請書に原料入口部分の記載のある強度計算書が添付されていたことは認めるが、その余及び同後段の事実は否認する。

検査を行なうべき対象は現実に検査を求められた圧力容器自体である。強度計算書は構造検査の申請においては法令上の提出義務はなく、実務上、検査の対象となる圧力容器の材料、構造、工作方法等について構造規格の適合性の審査を必要と認めた場合これを迅速、簡便に行なうための参考資料として、その提出を指導しているにすぎない。

(2) 同3(三)(2)前段の事実は認めるが後段の事実は否認する。

本件乾燥機の仕込口には、構造検査の時点においては厚さ二八ミリメートルの鋼製平板が取り付けられており、第一種圧力容器としての構造規格に適合していたものである。したがつて検査の対象となるのは前記のとおり現実に検査を求められた圧力容器である以上、構造図に右平板の記載が欠落しているといつた申請書類上の軽微な瑕疵を理由に構造検査の申請の却下、不合格等の処分をすることは不相当であり、これを補正させずに構造検査を行ない検査済証を交付したからといつて規則に違反するものではない。

(3) 同3(三)(3)の事実のうち静岡労働基準局長が原料投入口部分については構造検査を行なつていないこと、構造検査済証交付に際し強度計算書に割印を押捺したことは認めるが、その余は否認する。

前記のとおり原料投入口部分の取り付けられていない本件乾燥機の缶体部分について構造検査が行なわれ検査済証が交付されたのであり、強度計算書に割印が押捺されたとしても同書面記載の原料投入口部分を含めて検査済証を交付したことになるわけではない。

なお、構造検査済の割印は法定添付書類(明細書、構造図)が検査済証交付後に取り替えられたり脱落したりすることを防止するための慣行として行なわれているもので、参考資料にすぎない強度計算書に対しては割印を押捺する必要はないが、本件の場合は偶然に明細書と構造図との間に強度計算書が編綴されていたため一連の割印が押捺されたものである。

(四)  同3(四)前段及び中段の事実は認めるが後段の事実は否認する。

本件乾燥機は原料投入口部分の取り付けにより缶体の一部が変更されたのであるからあらためて構造検査を受けなければならなかつた。しかるに原告は右検査を受けないまま右部分の取り付け後の本件乾燥機の組立図を添付して落成検査を申請した。落成検査においては、構造検査申請に添付された明細書及び構造図を提出させ、当該圧力容器が構造検査等に合格したものであることを右明細書に検査者の押印があること及び同明細書と圧力容器に打たれた刻印とが符合することにより確認するものであるが、本件においては、前記組立図が添付され、あたかも同図面記載の原料投入口部分取り付け後の本件乾燥機が構造検査に合格ずみであるかのような形で右申請がなされたため検査官がその旨誤信したものである。

(五)  同3(五)の事実は否認する。

検査官に何らかの過失があつたとしても、本件事故は富士汽罐が構造検査未了の原料投入口部分を本件乾燥機に取り付けたため発生したものであるから、原告の損害との間に因果関係は存しない。

なお、労働安全衛生法関係法令上の圧力容器に関する各種規制は専ら労働者の安全確保を目的とするものであり、結果として事業者が安全な圧力容器を使用することができるという利益を享受したとしてもそれは事実上の利益にすぎないから、本件において原告の主張するような規制施行上の過誤があつたとしてもそれは原告との関係では違法性を有しないものというべきである。

4(一)  同4(一)の事実のうち原告が化成工場を廃業したことは認めるが廃業を余儀なくされたことは否認する。その余は知らない。

地域住民により操業停止決議がなされたとしても、法的拘束力はなく、説得等の努力により操業を再開できる可能性もあつた。したがつて廃業による工場設備関係の損害は特別事情による損害というべきであり、またこれを予見することは不可能であつた。

(二)  同4(二)の事実は知らない。

(三)  同4(三)の事実は知らない。

(四)  同4(四)の事実のうち本件事故以後化成工場が操業していないことは認めるが操業が不可能になつたことは否認する。その余は知らない。

本件事故による化成工場の設備の損傷は二日間で補修し得たものであり、地域住民による操業停止決議により操業が不可能になるわけではないことは前記のとおりであるから右期間を超える営業損害は特別事情による損害というべきである。また、その発生を予見することは不可能であつた。

(五)  同4(五)の事実は知らない。

三  抗弁

1  危険の引受、権利濫用

本件落成検査申請のための書類は富士汽罐が整備したものであるが、同検査の申請者は原告であり、最終的には原告関係者により右書類が検討され申請書に原告の会社印が押捺されている。したがつて原告は本件乾燥機の原料投入口部分が構造検査を経ていなかつたことを認識していたものである。

仮に右認識がなかつたとしても、原告は、事業者及び圧力容器の落成検査申請者として労働安全衛生法上職場における安全確保についての最高責任者とされ、規則五九条二項により落成検査の対象となる圧力容器が構造検査に合格したものであることの確認義務を負つており、しかも右確認を容易になし得たにもかかわらずこれを怠つたものであるから極めて重大な過失をおかしたものというべきである。

以上によれば、原告は、落成検査につき自ら申請したとおりの結果を得たものとみることができ、したがつてその結果に瑕疵があろうとそれは自ら承認し、そこから生ずる危険も甘受していたものというべきであるから、被告は原告に対する関係において落成検査上の違法性を阻却され不法行為責任を負わない。また右法理が妥当しないとしても、本件は前記のように自己の落成検査申請上の故意または重過失により自ら招いた損害を他に転嫁しようとするもので、このような損害賠償請求権の行使は信義則上許されないものであり権利の濫用である。

2  過失相殺

原告には構造検査を経ていない原料投入口部分取り付け後の本件乾燥機について落成検査を申請した点において規則五九条二項に、法令上の基準に適合していない本件乾燥機を使用した点において同六四条に各違反する過失があつた。よつて原告が労働安全衛生法関係法令上職場における安全確保について被告より本来的かつ高度な責任を負つていることも考慮すれば、九割以上の過失相殺がなされるべきである。

四  抗弁に対する認否及び反論

1  抗弁1の事実のうち、落成検査について訴外会社が申請のための書類を整備したこと、原告が申請者であること及び原告関係者が申請書に原告の会社印を押捺したことは認めるがその余は否認する。

2  同2の事実は否認する。

第三証拠 <略>

理由

一  本件事故の発生について

原告が昭和五〇年五月から富士宮工場内に新設した化成工場において第一種圧力容器である本件乾燥機によりブロイラーの食肉加工に伴い発生する残滓を処理し飼料化する事業を行なつていたところ、同年七月一一日同乾燥機の鉄蓋が吹き飛ぶ事故が発生したことは当事者間に争いがない。

二  被告の責任について

労働安全衛生法関係法令上の第一種圧力容器の製造及び設置に関する諸規則は、第一種圧力容器が、その内部において固体または液体の煮沸、加熱、反応等の操作を大気圧を超える状態で行なう装置であるため、蒸気の噴出等労働作業上の危険を伴い、また破裂した場合には大きな労働災害に至るおそれを有することから、国が、労働安全衛生行政の立場から、その構造等に一定の規格を定め、製造から設置に至る段階において製造許可、構造検査、落成検査等の審査手続を行ない、製造者が製造、搬出し事業者が設置する第一種圧力容器について右規格が確保されるよう監督し、その構造上の安全性を確保することにより労働者の生命、身体、健康を労働災害から保護することを目的とするものであり、国が事業者に対し右安全性を保証する制度ではなく、国が事業者に対し右規制を実施すべき義務を負うものではない。したがって右規制の結果第一種圧力容器の安全性が一般的に確保されることによつて事業者が利益を享受することがあつたとしても、それは事実上の利益にすぎず、前記審査手続上の過誤により規格適合性の審査が十分に行なわれないまま前記規格に適合しない第一種圧力容器が設置されるに至つたとしても、事業者との関係においては、その違法性を論ずる余地はないものと解すべきである。

本件において原告は右規制実施上請求原因第3項記載の過誤があつたことを被告が原告に対し国家賠償法一条一項に基く責任を負う根拠として主張する。しかし、原告が本件乾燥機を使用する事業者であつたことは前記のとおりであるから、仮にそのような過誤の存在が認められたとしても、前記のとおり原告との関係においては違法性を有しないものと解すべきである。よつて、原告の右主張は理由がない。

三  以上によれば原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないからこれを棄却することとし、訴訟費用の負担について民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 近藤壽夫 桜井康夫 中山顕裕)

別紙 原料投入口部分(側面図)〈省略〉

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例